僕と海と刺青と子供達
僕は人の親だ。
妻が居て命を共に育んだ。
命を授かり共に喜び、共に成長してきた。
子供達も成長し、海へ行ったある日。
子供達は初めて見る『刺青』の事をシールと呼んだ。
僕は海外かぶれで刺青が入ってる人を沢山見てきたので何も思わなかったけど子供達には新鮮だった。
そして、親の立場になった僕が放った言葉は恥ずべきものだった。
『見ない、近寄らない。』
「守らなければ」とだけ強く思ったのだけは覚えている。
親として子供に伝えるべき事はそんな事じゃないはずなのに。
人は見た目じゃないはずなのに。
だけど言ったその日は正しい事を子供達に伝えれたと思ってた。
彼らは背中から手へ、太ももから足先まで色とりどりの『刺青』を纏っていた。
纏っていただけなら何も言わない。個性だし主張だし権利だろう。
大人数で大きなテントを張り大きな声でバーベキューをし、食べ残したであろうトウモロコシを砂浜に捨て、片付けるかどうか怪しいとさえ思った缶ビールの山、禁煙では無いにしろ彼らの子供の前で容赦なく吸うタバコ。
彼らもまた親だった。
公衆のシャワー場で大勢の人が使う真水を溜めてるタンクに素っ裸で入ってる姿を見かけた時、僕は再度あの言葉を放った。
『見るな、近づくな。』
子供にこういう考えを押し付けるのは良くない。
分かっているけど見た目を超えた素行を目の当たりにした時、親としては子供に伝えなければならない。
『好奇心だけ携えて人生は生きていけないのだ』と。
僕は子供達に伝えた 『見ない、近寄らない』が正しいかどうか未だに迷い続けている。
~オワリ~